ぶらり歩き

20. 紅葉狩り                                       平成21年11月15日

 今年は例年になく紅葉が美しいと聞き、11月15日に大雄山最乗寺をドライブがてら訪ねる。最高気温20℃を記録してこの時期にして暖かい秋晴れの日和となり、境内は参拝客というよりも、紅葉狩りやハイキングを楽しむ人で賑わっている(写真1)。最乗寺は現在の伊勢原市出身の了庵慧明(りょうあんえみょう)禅師によって、応永元年(1394年)に開山された曹洞宗の古刹で、霊場、修行道場となっている。紅葉する樹木が少ないせいか、境内全体が紅色あるいは黄色に染まるという景観を呈することはないが、紅葉した樹木は青空を背景にして鮮やかな色づきを見せて美しい(写真2)。          

写真1 最乗寺境内  写真2 最乗寺の紅葉 


 
最乗寺に引き続き、11月の三連休の一日を利用して埼玉県の嵐山渓谷(らんざんけいこく)に紅葉見物に出掛ける。八王子から圏央道を経由して関越自動車道の東松山ICで降りて、カーナビを頼りに嵐山渓谷に着く。車を駐車して先客の列に従ってしばらく歩いて行くと、槻川(つきかわ)の両側に迫る大平山塩山で形成された嵐山渓谷に出る。川沿いの岩場を少し上流に向かうと、正面に正山(塩山)が現れたところで川はU字形に蛇行し、両側の紅葉した木々が傾きかけた西日に照らされて輝き、その姿を川面に映し出している(写真3)。嵐山という地名は、昭和3年(1928年)に林学博士の本多静六博士が京都の嵐山に似ていることから武蔵嵐山(むさしらんざん)と命名したことに由来する。秋の嵐山を訪ねたことがないため、紅葉の美しさを比較することはできないが、嵐山渓谷の紅葉はなかなか絶景といえる。蛇行した川に挟まれた台地上から渓谷を見下ろして眺める紅葉(写真4)も美しい。

写真3 槻川に映る紅葉  写真4 嵐山渓谷紅葉 


 

 12月に入り紅葉も低地に移ってきたため、都内の小石川植物園を訪ねる。生憎の雨となり、寒さの中の紅葉狩りとなる。小石川植物園は江戸幕府によって開園された小石川御薬園(こいしかわおやくえん)が始まりであり、その後、薬園内に診療所が設けられた。これが 山本周五郎の小説「赤ひげ診療譚」の舞台となる小石川養生所である。

 正門から左回りに園内を歩くと、生きている化石と言われるメタセコイア(写真5)が赤茶色に紅葉している。自宅近くの相模原公園に植えられた30mを越えるメタセコイアの並木を真夏に見たときの青々と葉を繁らせた、圧倒的な存在感を与える印象が強かったため、メタセコイアが紅葉するとは少しも考えていなかったが、すでに一部が落葉して幹や枝があらわになった姿も生きている化石らしくて趣きがある。
 傘を差しながら、日本庭園ボダイジュ並木イロハモミジ並木(写真6)と歩いていくと、雨にも拘らず何組かの見学者とすれ違う。園内には1923年の関東大震災のときに3万人の被災者が避難してきたことを示す石碑が建てられている。
 
 雨足が強くなってきたが、植物園に程近い寛永3年(1626年)に創建された一行院(いちぎょういん)を訪ねる。この寺は、徳本行者の江戸の道場となり、境内には徳本の墓所(写真7)がある。徳本行者は浄土宗の高名な行脚僧で、独特の書体で刻まれた南無阿弥陀仏の六文字名号塔は全国に1,000体以上残されているという。

写真5 小石川植物園メタセコイア  写真6 小石川植物園イロハモミジ並木  写真7 一行院 徳本墓所



 

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